商事仲裁判断は終局的なものであり、裁判所のような控訴制度は存在しません。また、仲裁手続には再審や再調査といった仕組みもありません。しかし、商事仲裁判断に法令違反がある場合、当事者は裁判所に対し、仲裁判断の取消しを申し立てる権利を有しています。本記事では、ベトナムにおける商事仲裁判断取消しについて詳しく解説いたします。LHB Law Firmは、商事法分野における法的サービスを提供しており、その中にはベトナムにおける商事仲裁判断取消しに関する相談・サポートも含まれます。お問い合わせ・ご相談はホットライン:+84.982.860.613(Viber), Line: https://line.me/ti/p/Ahu2jrhEldまでお気軽にご連絡ください。
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商事仲裁判断の取消し条件
仲裁手続においては、仲裁廷が審理を行い、当事者双方が直接、自らの主張、証拠、そして論拠を仲裁廷に提示します。仲裁廷は争点を明確にし、仲裁判断を下すための根拠を整えます。商事仲裁法2010年第61条(ベトナム商事仲裁法)によれば、仲裁判断は審理の場で直ちに下される必要があります。もしそうでない場合でも、最終審理の終了から30日以内に判断が下されなければなりません。仲裁判断は、発行後直ちに当事者へ送付されます。
さらに、当事者が和解に至った場合、仲裁廷はその合意を認定する決定を下します。商事仲裁法第58条に基づき、この決定は仲裁判断と同等の効力を持ちます。
商事仲裁判断の取消しに関する詳細なご相談は、+84.982.860.613(Viber), Line: https://line.me/ti/p/Ahu2jrhEldまでお問い合わせください。
ベトナム商事仲裁法によれば、「仲裁判断は最終的なものであり、発行日から効力を有する」と規定されています。仲裁判断は、仲裁廷による紛争解決の最終結果であり、仲裁手続全体を終了させるものです。この判断に対しては控訴や抗告は認められていません。また、仲裁判断には再審や特別審に相当する制度も存在しません。
しかしながら、法律上、当事者は商事仲裁判断の取消しを裁判所に請求することが認められています。仲裁判断を取消すためには、法律で定められた条件を満たす必要があります。仲裁判断の取消し条件は以下のとおりです:
- 仲裁判断を取消すべき正当な理由(根拠)が存在すること;
- 仲裁判断の取消しを請求する権利があること。

仲裁判断を取り消すための根拠
仲裁判断を取り消すための根拠は、商事仲裁法第68条に規定されており、さらに最高人民裁判所の決議01/2014/NQ-HĐTPによって具体的にガイドラインが示されています。これらの根拠は主に仲裁権限や手続上の違反に関連しています。加えて、仲裁判断が法律の基本原則に反する場合も、取り消しの理由となります。
当事者は、以下のいずれかの根拠が存在する場合、裁判所に対して仲裁判断の取消しを請求する権利を有します(商事仲裁法第68条第2項)。
仲裁合意が存在しない、または仲裁合意が無効である場合
仲裁合意とは、当事者間で紛争を仲裁により解決することを定めた合意を指します。商事仲裁法第5条では、仲裁合意は仲裁手続の前提条件であると明確に定義されています。
- 紛争解決は、当事者が仲裁合意を結んでいる場合にのみ仲裁によって行われます。
- 仲裁合意は、紛争発生の前後いずれの時点でも締結可能です。
- 仲裁判断は、有効な仲裁合意に基づいてのみ効力を持ちます。
したがって、有効な仲裁合意が存在しない場合、当事者は裁判所に仲裁判断の取消しを請求する正当な根拠を有することになります。
仲裁廷の構成または手続が合意や法律に違反している場合
仲裁機関は、当事者間の仲裁合意に従い、仲裁廷の構成や手続規則を尊重しなければなりません。同時に、仲裁廷は商事仲裁法の規定を遵守する義務があります。
- 違反が確認された場合、裁判所はその違反の程度を審査します。
- 違反が重大かつ修復不可能である場合、または裁判所の要求に従って是正されない場合、仲裁判断は取り消されます。
例1:当事者の一方が、商事仲裁法第32条に基づく起訴状の適切な通知を受けなかった場合、その当事者は仲裁廷を設立する権利を失い、重大な不利益を被ることになります。裁判所はこれを重大な手続違反と見なし、仲裁判断の取消しを認める可能性があります。
例2:当事者双方が「仲裁人3名による仲裁廷で、ベトナム法を適用して紛争を解決する」と合意していたにもかかわらず、実際には仲裁人1名のみで構成され、シンガポール法が適用された場合、これは合意内容を大きく逸脱するものです。こうした仲裁手続の変更は重大な違反とされ、仲裁判断は取り消される可能性が高くなります。
仲裁廷の管轄権外の紛争
紛争が仲裁で解決できる範囲に属さない場合、仲裁廷は管轄権を逸脱したものとみなされます。仲裁の管轄権は、商事仲裁法第2条に基づき、以下の通り定められています。
- 当事者間の商取引活動から生じた紛争
- 少なくとも一方の当事者が商取引活動を行っている場合に生じた紛争
- その他、法律により仲裁で解決できると規定されている紛争
同様に、仲裁廷が当事者間の合意の範囲を超えて判断を下した場合、その部分の判断は取り消しの対象となります。
このようなケースでは、裁判所は仲裁判断の一部または全部を取り消す権限を持ちます。原則として、管轄権を超えた部分のみが取り消され、それ以外の部分は有効に存続します。
管轄権外の部分と管轄権内の部分が明確に切り分け可能な場合 → 超過部分のみ取り消し。
両者が切り離せない内容である場合 → 仲裁判断全体が取り消される。この「切り分けの可否」の判断は、裁判所の裁量によって行われます。
この原則は、仲裁手続における当事者の合意の自由と法的制限のバランスを取るためのものです。したがって、当事者は仲裁合意を締結する際、後の管轄権に関する紛争を避けるため、慎重に内容を定めることが重要です。
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偽造証拠の提出・仲裁人による金銭的利益の受領
当事者が偽造証拠を提出した場合、または仲裁人が当事者から金銭的利益を受け取った場合、仲裁判断に重大な影響を及ぼすため、取り消しの対象となります。裁判所が偽造証拠を審査するのは、仲裁判断の取消しを求める明確な資料や証拠が提出された場合に限られます。偽造が疑われる証拠は、仲裁判断の内容に直接関係し、かつ判断の客観性・公正性に影響を与えるものでなければなりません。争点に関係しない、あるいは判断結果に影響を及ぼさない証拠については、裁判所は検討対象としません。証拠が偽造であるかどうかの判断は、商事仲裁法および当事者間で合意された手続規則に基づきます。また、裁判所は仲裁廷が証拠を評価する際に採用した方法も考慮に入れ、総合的に判断を下します。
さらに、仲裁人が一方の当事者から金銭やその他の利益を受け取った場合、その独立性と中立性が損なわれます。これは商事仲裁法に定められた公平・中立の原則に反する行為です。このような利益供与は、仲裁人が紛争解決の過程で偏った判断を下す原因となり得ます。裁判所は、仲裁人が受け取った利益と仲裁判断の内容との関連性を検討します。もし明確な偏向の根拠が認められれば、その仲裁判断は取り消されます。
仲裁判断がベトナム法の基本原則に反する場合
仲裁判断は、ベトナム法体系全体を規律する基本原則(例:契約自由の原則、誠実・誠意の原則、信義則、平等、正当な利益の保護など)を遵守しなければなりません。もし仲裁判断の内容がこれら一般的な行為規範に違反した場合、その判断は取り消しの対象となる可能性があります。裁判所は、仲裁判断が紛争解決に関連する基本原則を侵害しているかどうかを検証します。
ただし、すべての違反が直ちに仲裁判断の取り消しにつながるわけではありません。違反によって当事者の権利や正当な利益に深刻な影響を及ぼす場合に限り、取り消しが検討されます。もし仲裁廷が基本的な原則を適用しなかったり、歪めたりした場合、その判断はもはや合法性を失います。裁判所は、違反の存在が明確であり、かつ法的な結果を伴うと確認された場合にのみ、仲裁判断を取り消します。
仲裁判断の取消しを求める権利
商事仲裁判断の取消しを請求できるのは、紛争当事者のみです。裁判所への申立て期間は、仲裁判断を受領した日から30日以内と定められています。もし仲裁判断の取消し事由を裏付ける証拠がある場合、当事者は裁判所に対して取消しの申立てを行うことができます。
申立てを行う当事者は、管轄裁判所に申立書を提出しなければなりません。同時に、請求の根拠となる資料や証拠を添付する必要があります。外国語の文書は、正しく翻訳され、かつ公証されたベトナム語訳を提出しなければなりません。
法律の規定によれば、仲裁判断取消しの申立書には以下の主要事項を記載する必要があります:
- 申立書作成の日付(年・月・日)
- 申立当事者の氏名および住所
- 仲裁判断取消しの請求内容とその根拠
さらに、申立書には次の書類を添付することが義務付けられています:
- 仲裁判断の正本または公証された写し
- 仲裁合意の正本または公証された写し
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商事仲裁判断の取消し手続きの流れ
商事仲裁法第71条では、商事仲裁判断の取消し申立てに関する手続きが規定されています。取消しの手続きは以下の段階に分かれます。
ステップ1:裁判所からの通知
裁判所は商事仲裁判断の取消し申立てを受理した後、関係機関に通知を行います。通知先は、仲裁センター、紛争当事者、同一レベルの検察院です。
ステップ2:審理委員会の設置
裁判所長は商事仲裁判断の取消し申立てを審理する委員会を指名します。委員会は3名の裁判官で構成され、そのうち1名が委員長を務めます。指名は受理から7営業日以内に行われなければなりません。
ステップ3:審理期日の開催
委員会は取消し申立てを審理するために期日を開きます。期日は指名から30日以内に開催されます。その7日前までに、裁判所は検察院に事件記録を送付し、検察院は期日開催に間に合うよう返却しなければなりません。期日には、紛争当事者、弁護士(いる場合)、および検察官が参加します。
ステップ4:取消し申立ての審理
委員会は、当事者が提出した資料や証拠に基づき申立てを審理します。裁判所は仲裁判断で解決された紛争内容を再審理することはなく、取消しの要件があるかどうかのみを検討します。期日では、裁判所が参加者に意見を求め、検察官や召喚された者が意見を述べます。その後、委員会は評議を行い、多数決で決定します。
ステップ5:決定の発表
委員会は、商事仲裁判断を「取消す」または「取消さない」旨の決定を下す権限を持ちます。裁判所の決定は最終的なものであり、法的拘束力を有します。取消しが認められなかった場合、仲裁判断はそのまま執行されます。
また、以下の場合には、委員会は審理を打ち切ることができます:
- 申立人が取消し申立てを取り下げた場合
- 申立人が正当な理由なく期日に欠席した場合
- 申立人が許可なく期日を途中で退出した場合
さらに、委員会は最大60日間の一時停止を決定し、仲裁廷に手続上の不備を是正する機会を与えることも可能です。仲裁廷は是正結果を裁判所に報告し、是正が行われない場合、委員会は手続きを再開します。
仲裁判断が取消された場合、当事者は以下の選択肢を持ちます:
- 再度合意し、仲裁に付す
- 裁判所に訴訟を提起する
ベトナムにおける仲裁判断取消しに関する弁護士相談
LHB Law Firm は、商事法分野における専門的な法律相談を提供しています。当事務所では、正確かつ迅速なワンストップのリーガルサービスを行い、経験豊富な弁護士・専門スタッフが商事仲裁判断の取消しの可能性について検討・評価いたします。
LHB Law Firm は、お客様に対して法的根拠、申立て期限、手続きの流れ、想定されるリスクを明確にご説明いたします:
相談場所・方法:
- 本社または支店での直接相談
- Eメール、電話での相談
- 書面によるリーガルオピニオンの発行
ご依頼者には、必要書類のリストや申立ての具体的な手続き方法について、わかりやすくご案内いたします。
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ベトナムにおける仲裁判断取消しに関する弁護士サポート
LHB Law Firmは、お客様に代わって裁判所と直接対応し、商事仲裁判断の取消しを正式に申立てます。当事務所の弁護士は以下の業務を担当します:
- 申立書の作成、必要書類の準備、提出および裁判所での手続き全体のフォローアップ
- 取消し申立てに関する審理期日に出席し、意見を述べ、お客様を弁護
- 証拠の提供・照合、相手方の主張に対する反論の構築
- 検察院、仲裁センター、その他関係機関との調整・連絡
さらに、手続きの各段階において、お客様へ進捗を逐次報告し、発生するあらゆる問題について的確なアドバイスを行います。緊急案件、複雑な書類、不測の事態にも柔軟に対応いたします。当社の目標は、お客様が法的に適正で、かつ正当な権利を確実に守られる結果を得られるよう尽力することです。
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ベトナムにおける商事弁護士サービス料金
サービス内容 | 料金(VND) | 備考 |
初回法律相談 | 3.000.000 – 10.000.000 | 仲裁判断取消しの手続きに関する相談 |
申立書の作成 | 5.000.000 – 15.000.000 | 必要書類・資料の準備 |
申立書の提出 | 10.000.000 – 20.000.000 | 管轄裁判所への代理提出 |
取消し審理での代理 | 20.000.000 – 50.000.000 | |
相手方からの反論対応 | 15.000.000 – 30.000.000 |
*ご注意:
- 上記料金は、案件の規模・複雑さ・地域によって変動する場合があります。
- 料金には、交通費、書類コピー代、裁判所での事務手数料などは含まれておりません。
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